マイホームが欲しくて、ハウスメーカーを検討していると・・・気付くことがひとつあります!
それは「木造構造の住宅がメチャクチャ多い」ってこと。
とはいえ、木造住宅以外にも「鉄骨住宅」も存在します。
総務省が平成20年におこなった調査によると、住宅の構造は「木造」が2923万戸で住宅全体の58.9%、鉄骨やコンクリート造などの「非木造」は2037万戸(41.1%)との結果でした。
昔に比べて、マイホームを建てるときに、鉄骨を選ぶ方が増えている昨今。
- 「なぜ、鉄骨住宅が選ばれているのか?」
- 「鉄骨住宅にはどんなメリット・デメリットがあるのか?」
この記事で、ローコストで建てられる鉄骨住宅についてくわしく解説します。
鉄骨住宅に興味のある方は、ぜひとも参考にしてみてください!
この記事の目次
軽量鉄骨と重量鉄骨の違いとは?
鉄骨住宅には、軽量鉄骨と重量鉄骨の2種類があることをご存じでしょうか。
どちらを選ぶかで、完成する家はかなり違うものになります。
- 鋼材の厚みが6mm未満
- 2階建て住宅やアパートなどの建築に使われる
- 鋼材の厚みが6mm以上
- 3階建て以上の住宅や高層ビルに使われる
軽量鉄骨と重量鉄骨は、使われる鋼材の厚みによって分けられています。
ちなみに6mmちょうどであれば、重量鉄骨ということになりますね。
ローコストなのは軽量鉄骨
ローコストに鉄骨住宅を建てられるのは、軽量鉄骨です。
軽量鉄骨なら、同じ家を木造で建てる場合とだいたい同じ価格帯になるようです。
そもそも鉄骨住宅を建てているハウスメーカーの多くは、軽量鉄骨を扱っています。
一般住宅に十分な強度が出せて、ニーズに合った価格帯で鉄骨住宅が建てられることがおもな理由でしょう。
しかし、重量鉄骨の家を建てるメーカーも増えてきています。
それなら重量鉄骨の特徴も知ったうえで、どちらかを選びたいですよね。
軽量鉄骨の工法について
軽量鉄骨の家は、ほとんどプレハブ工法で建てられています。
プレハブ工法とは、材料を工場で作って建築現場ではそれを組み立てるだけ、という家の作り方です。
現場で細かい施工を必要としないため、完成度が職人の技術に左右されにくいことがメリットといえます。
また軽量鉄骨には、ブレース構造を採用しているケースが多いという特徴もあります。
ブレースとは、柱と柱の間に斜めに取り付けられる部材のことです。
ブレース構造では、このブレースが地震などによる衝撃を逃がす役割を果たします。
柔軟に衝撃を受け流すイメージといえるでしょう。
ブレースが室内に露出するデザインのインテリアもあり、ブレースは軽量鉄骨のシンボル的存在ともいえます。
軽量鉄骨でローコスト住宅を建てるメリット
軽量鉄骨で家を建てることの、具体的なメリットをご紹介します。
たくさんの方が軽量鉄骨を選ぶのはなぜでしょうか。
施工費用が安い
施工費用を安くできることは、軽量鉄骨で家を建てることの大きなメリットです。
軽量鉄骨の家を建てるときの、プレハブ工法に安さの理由はあります。
- 材料を工場で大量生産するため安くできる
- 現場での人件費を安くできる
- 工期が短く済むため安くできる
プレハブ工法は工場で材料を量産できるため効率がよく、費用を安くできます。
建築現場ではその材料を組み立てるだけなので、細かい施工を必要としません。
そのため職人の作業負担を減らすことができ、人件費の節約につながります。
作業量が少なく済むため、軽量鉄骨の家は着工してから3~4か月程度で完成するのが一般的です。
工期が短いことも、人件費の節約につながるでしょう。
このようなプレハブ工法のシステムが、軽量鉄骨の安さにつながっているのです。
地盤改良工事を小規模に済ませやすい
軽量鉄骨は、軽微な地盤改良工事で済ませられる可能性が高いというメリットがあります。
軽量鉄骨は重量鉄骨より、自重が軽いことがおもな理由です。
家を建てる土地の地盤状況によって、必要な地盤工事や費用が変わることにはご注意ください。
地盤によっては、改良工事なしで済ませられるケースもあるでしょう。
木造軸組工法より大開口を作れる
軽量鉄骨の家は、木造軸組工法の家より大開口のある間取りを作りやすいというメリットがあります。
鉄は木よりも強い材料であることが、おもな理由です。
しかし軽量鉄骨の家はブレースの位置によって、間取りの制限を受ける可能性もあるので注意が必要です。
同じくブレースの影響で、壁を取り去るなどのリフォームに対応できないケースもあります。
このように、軽量鉄骨のブレースがネックになる場合もありますが、大開口が作れることは魅力といえるでしょう。
軽量鉄骨でローコスト住宅を建てるデメリット
ローコストな鉄骨住宅を実現できる軽量鉄骨には、デメリットもあります。
デメリットのカバー方法もご紹介するので、構造選びにお役立てください。
断熱に工夫が必要
鉄骨住宅には、断熱性能が低くなりやすいというデメリットがあります。
鉄は木と比較して、熱が伝わりやすい特徴があるため、外気が室内に影響を与えやすいのです。
- 外断熱を選ぶ
- 調湿機能付きの壁紙を選ぶ
- 高性能な窓を選ぶ
住宅の断熱方法は、外断熱と内断熱です。
建物の外から断熱材を使用する外断熱は、鉄骨住宅の断熱性の低さをカバーできる可能性があります。
しかし外断熱の施工にはコストがかかるので、計画的なプランニングが必要です。
プラスアルファとして、壁紙や窓の性能をよくすると、室内を快適に保ちやすくなるでしょう。
防音性が低い
防音性の低さは、軽量鉄骨の家のデメリットといわれます。
鉄筋コンクリートは防音性が高く、木造は防音性が低いのですが、鉄骨はその中間です。
しかし鉄骨の中でも軽量鉄骨の場合は、木造よりも防音性が劣るケースもあるためご注意ください。
- グラスウールを壁内に使用する
- 防音シートなどを石膏ボードに施工する
軽量鉄骨の壁内にある空洞が、音の振動を伝えてしまうことが防音性の低さのおもな原因です。
対策として、その空洞にグラスウールなどの遮音材をいれる方法があります。
また、防音シートを壁の施工段階で施工することも、防音性向上のために役立ちます。
鉄骨造のわりに耐火性が高くない
軽量鉄骨の耐火性はそれほど高くない点は、デメリットといえるでしょう。
「鉄は燃えないので火災になっても大丈夫…」
これは間違いで、実は鉄骨は熱に弱いという重大な欠点があります。
540℃以上に熱せられると、鉄骨が変形して強度が落ちるため、いきなり倒壊する危険性が高くなります。
その点、木造は燃えて倒壊するまでに時間を稼げるため、避難する時間を確保できるでしょう。
おもな鋼材を耐火被覆で覆うことで、耐火性を高くします。
耐火被覆で覆うと、火災にあっても鉄の強度を保てる時間を長くする効果が期待できるのです。
体に害があると問題になったアスベストは、その目的で使用されていました。
現在は、ロックウールと呼ばれる素材が耐火被覆で使われています。
重量鉄骨の工法について
重量鉄骨の家はラーメン構造という方法で建てられます。
ラーメン構造とは、柱と梁が一体になるよう溶接する建築方法で、頑丈な枠を連続させたような構造が特徴です。
鋼材を溶接する方法は何種類かありますが、この部分が建物の強度に大きく影響します。
軽量鉄骨とは違い、重量鉄骨のラーメン構造ではブレースは使用しません。
重量鉄骨でローコスト住宅を建てるメリット
重量鉄骨は軽量鉄骨と同じ鉄骨ではありますが、軽量鉄骨と大きく異なる特徴があります。
重量鉄骨で家づくりをすることには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
軽量鉄骨以上に大空間の間取りを作れる
重量鉄骨の家は、ラーメン構造のおかげで、大開口を作りやすいというメリットがあります。
重量鉄骨では頑丈な鋼材を使用するため、少ない柱で強度を出すことができるためです。
軽量鉄骨と違いブレースを使わないので、遮るもののない大開口を実現できるでしょう。
重量鉄骨は、車を横並びに駐車できるビルトインガレージのある家にぴったりです。
防音性が高い
重量鉄骨は、軽量鉄骨より防音性が高いというメリットがあります。
理由は、使用する鋼材の厚みがあるため家の壁も厚くなることにあります。
厚みがあるぶん、音が伝わりにくくなるのです。
重量鉄骨でローコスト住宅を建てるデメリット
重量鉄骨には、軽量鉄骨のデメリットをカバーするメリットがありました。
次に、ローコスト住宅に重量鉄骨を選ぶことの、デメリットを見てみましょう。
重量が重く費用がかかる
重量鉄骨は建築費用が高いというデメリットがあるため、ローコスト住宅に選ぶにはハードルが高い構造です。
重量鉄骨に使う鋼材は、同じものを大量生産する作り方に適していないことが、費用が高くなるおもな理由です。
重量鉄骨の鋼材の成型には時間もかかります。
これら点は、軽量鉄骨と費用面で差がつく理由といえるでしょう。
大規模な地盤改良工事が必要になりがち
重量鉄骨の家を建てるときは、大規模な地盤改良が必要なるケースが少なくありません。
重量鉄骨は鋼材の厚みがあり、自重が重いため、他の工法より強い地盤が必要なのです。
必要な地盤改良工事は土地によって変わるため、あらかじめ工事費用を予測することが難しく、多くの方の悩みの種となります。
近隣の土地の建築実績や、ハザードマップなどを参考に土地探しをすると、工事費用の目安をつかめることもあります。
鉄骨住宅と木造住宅の比較
家づくりに鉄骨造を選ぶ方が増えて、その割合は木造に追いつきつつあります。
しかし、まだ木造の方が多いのが現状です。
鉄骨住宅と木造住宅を、いくつかの項目で比較してみましょう。
地震や火災への強さ
同じ鉄骨でも、軽量鉄骨と重量鉄骨には大きな違いがあります。
そのため、災害への強さを「軽量鉄骨・重量鉄骨・木造」で比較してみましょう。
災害のなかでも、今回は地震に注目して解説します。
地震にいちばん強いのは、重量鉄骨といわれています。
強さの理由は、重量鉄骨の構造が、がっちりと強固であることです。
しかしこの強固さのため、一定以上の力がかかると耐えられなくなり倒壊するリスクはあります。
一方、軽量鉄骨と木造の耐震性は似ています。
ブレースや木の柔軟性により、衝撃を受け流すのです。
このように「重量鉄骨」、「軽量鉄骨・木造」は違った方法で災害に耐える特徴があります。
耐用年数
実際の寿命はメンテナンスなどにより大きく差が出るので、法定耐用年数で比較してみましょう。
鉄骨は使用する鋼材の厚みによって、細かく法定耐用年数が異なるので、先にご紹介します。
- 鋼材の厚みが3mm以下の鉄骨は19年
- 鋼材の厚みが3mm超4mm以下の鉄骨は27年
- 鋼材の厚みが4mm超の鉄骨は34年
軽量鉄骨と重量鉄骨は、鋼材の厚みが6mm未満か以上かで分けられます。
つまり重量鉄骨なら法定耐用年数は34年ですが、軽量鉄骨は19年にも34年にもなり得ることがわかります。
ちなみに木造は法定耐用年数22年、鉄筋コンクリート造は47年です。
軽量鉄骨は、鋼材の厚み次第で木造より法定耐用年数が短くなります。
軽量鉄骨は、どれくらいの厚みの鋼材なのかを意識することが大切ですね。
火災保険料
一般的に、鉄骨住宅は木造住宅よりも火災保険料が安いとされます。
しかし実は、一律にそれが当てはまるわけではありません。
木造でも省令準耐火建物に該当するなど、耐火性が高い場合は火災保険料が安くなります。
火災保険料は、火災のときに燃えにくい建物であるかどうかを基準に決められます。
そのため木造だから火災保険料が高いと、一概にはいえないのです。
重量鉄骨のメリットをもつ木造「重量木骨」とは
「重量木骨」とは、重量鉄骨のような特徴を持つ木造です。
阪神大震災のあとで開発された、地震に強い構造です。
材料は構造用集成材で、それを特殊な接合システムで連結させて家を建てます。
重量鉄骨の項目でご紹介したメリットをそのままに、木造のよさを取り入れた構造といえるでしょう。
重量木骨なら、木造で大開口のビルトインガレージも実現できます。
デメリットは、一般的な木造軸組工法より建築費用が高くなることです。
また集成材に抵抗のある方にとっては、構造用集成材によって建てられるという点もネックになるかもしれません。
重量木骨で家を建てた我が家の感想
家の安全性にこだわった我が家は、重量木骨を選びました。
重量木骨の家に4年暮らして、感じたことをお伝えするので、ぜひ参考にしてくださいね。
- 室内に余分な梁が露出しないのでスタイリッシュ
- 暑さや冷えなどの問題がない
- 集成材が原因の問題はなにも感じない
- 上階での足音は響く
重量木骨は大開口を作るのが得意なので、大空間を作っても、部屋の角に余分な梁が露出することがありません。
細かい部分のようですが、余分なものがないインテリアはスタイリッシュに見せやすいメリットがあります。
梁が少ないため、手の届きにくい部分に埃がたまってしまう心配もありません。
そして、室内は極端に暑かったり寒かったりということはなく、結露もしません。
室内環境の良さは、やはり木造ならではだと感じています。
しかし音が響く点は、木造のデメリットといえます。
新築前に住んでいたのがRC造のアパートだったため、防音性の差は大きく感じられます。
まとめ
軽量鉄骨ならローコストに鉄骨住宅を建てられますが、鋼材の厚みに注意することが大切です。
ローコストにこだわって、鋼材の厚みを薄くしすぎると、木造の方が安全だった…となりかねません。
高性能な重量鉄骨を選んで、構造以外をローコストにするのも1つの方法といえるでしょう。
ご家庭の価値観にマッチした構造を選んで、後悔の少ない家づくりをしてくださいね。