家を安く建てたいと考えている方に向けて、ローコスト住宅を建てる際の屋根材の選び方についてこの記事では解説します。
普段の生活では見る機会が少ない屋根材は、コストカットのために適当なものを選んでしまいたくなるところですが、よく考えてから選ぶことで後悔の少ない家づくりができます。
性能と価格のバランス、将来的なメンテナンスサイクルも考慮して、悔いのない屋根材選びをしましょう。
この記事の目次
ローコスト住宅の主な屋根の形をご紹介
ローコスト住宅メーカーの家は、外観や基本的な設備機能をシンプルなものにすることでコストカットをしています。
屋根の形に関してもシンプルなものが中心ですが、具体的にどのような形の屋根がローコストなのでしょうか。
片流れ屋根
片流れ屋根のメリット
- 施工費を抑えやすい
- メンテナンスや修繕がしやすい
- 片流れ屋根の傾きを利用して屋根裏やロフト部分を充実させやすい
- ソーラーパネルの設置がしやすい
片流れ屋根のデメリット
- 施工がしっかりしていないと雨漏りしやすい形状である
- 軒が左右対称でないため、風雨や紫外線などの影響を受けやすい面の外壁が比較的早く劣化する
- 雨どいへの負担が大きくなるため劣化が早い
片流れ屋根は、1枚の大きな屋根が家の上に斜めに乗った、シンプルな形状の屋根です。
外観がシンプルなだけでなく、構造的にも結合部分が少ない特徴があるため施工費を効果的に抑えられる形状といえます。
屋根の施工費は家全体の価格に大きく影響するため、施工費の安い片流れ屋根はローコスト住宅によく選ばれる傾向があります。
片流れ屋根はモダンな外観であるため、特に最近のトレンドとされる和モダンやシンプルモダンな家との相性がよい屋根です。
しかし片流れ屋根は雨漏りの報告が多いというデータがあるため、業者選びには特に注意が必要といえます。
切妻屋根
切妻屋根のメリット
- 施工費を抑えやすい
- メンテナンスや修繕がしやすい
- 雨漏りしにくい構造
- 典型的なタイプの屋根裏を確保できる
- 主張しすぎない無難な外観になる
切妻屋根のデメリット
- 三角部分の外壁(妻側の壁)の劣化が早い
- ケラバと呼ばれる屋根の先端からの雨漏りに注意が必要
切妻屋根とはオーソドックスな三角屋根のことであり、家の形をイラストに描くときは多くの方が切妻屋根を描くのではないでしょうか。
三角屋根の頂点部分につなぎ目があるものの、2枚の屋根を組み合わせただけのシンプルな構造であるため、施工費用は抑えやすいタイプの屋根といえます。
どのようなテイストの家にも合わせやすいため、最も選ばれている屋根の形です。
切妻屋根を選んで、家の外観で大きく失敗する心配が少ない反面、個性的な家が希望の場合は物足りない完成になる可能性もあります。
切妻屋根は左右対称な形でつなぎ目も少ないため、雨漏りしにくい構造とされますが、ケラバは雨漏りに弱い部分とされるため、雨仕舞がしっかりされていることが重要です。
差しかけ屋根
差しかけ屋根のメリット
- 施工費を抑えやすい
- 屋根裏スペースを充実させられる
- 段になった部分に窓を施工できるため通気性がアップする
- 風雨や紫外線の影響を分散できる
差しかけ屋根のデメリット
- 低い位置にある屋根と外壁の取り合い(つなぎ目)から雨漏りのリスクがある
差しかけ屋根は招き屋根という名称も併記して示されることが多いですが、基本的に段違いになった形状の屋根を指します。
具体的には、切妻屋根の家の片側の外壁途中に短い屋根が追加された形や、左右非対称な片流れ屋根を段違いに組み合わせた形です。
お互いを支え合うような形の屋根は、風雨などの影響を分散でき屋根へのダメージを減らせます。
ただし段違いになったつなぎ目部分の雨仕舞がしっかりされ、きちんとした雨漏り対策がされていることが重要です。
屋根の形には様々なタイプがありますが、差しかけ屋根はデメリットが少なくコストも抑えやすい、バランスのよいタイプの屋根といえます。
コストがかかる屋根の形は?
入母屋屋根や越屋根、寄棟屋根などは形が複雑なため手間がかかり施工費も高くなります。
形が複雑であることは、雨漏りするリスクがある部分が多いということでもあるため、メンテナンスや修繕費用も余分にかかりがちです。
施工費もランニングコストも高くなるため、ローコスト住宅では複雑な構造の屋根が採用されるケースは少ないと言えます。
主な屋根材の特徴や費用目安をご紹介
屋根材には、粘土瓦から金属系の材質まで様々なものがありますが、どれを選択するかでかかる費用や耐用年数が大きく変化します。
ローコスト住宅にはどの屋根材を選ぶのがよいのでしょうか。
スレート(コロニアル・カラーベスト)
スレートのメリット
- 施工費を抑えやすい(1平米あたり5,000円前後)
- 軽く耐火性が高いため地震などの災害時に安全
- シンプルな屋根材のため施工する家のデザインを選ばない
スレートのデメリット
- 水に強くない
- 防水効果をキープするため約5年サイクルでのメンテナンスが推奨される
- ひび割れしやすい材質であり、雨漏りのリスクがある
スレートは安いものだと1平米あたり4,000円程度の場合もあるくらい安く、さらに安全性も高いため、多くのローコスト住宅に採用されている屋根材です。
街で見かける屋根のほとんどはスレートと考えてよいほどポピュラーな屋根材といえます。
ちなみにスレートには人工のものと天然のもの2種類がありますが、施工費が安く多く採用されているのは人工で、天然は一般的に高級屋根材とされます。
スレートはカラーベストやコロニアルと呼ばれるケースもあり混乱しますが、これらは人工スレートの商品名です。
人工スレートは安くて安全なため人気のある屋根材ですが、耐用年数は一般的に20年程度と短めです。
約5年ごとに適切なメンテナンスがおこなわれないと、さらに寿命は短くなるでしょう。
アスファルトシングル
アスファルトシングルのメリット
- 施工費を抑えやすい(1平米あたり5,000円前後)
- 柔らかいシートであるため軽量で加工しやすい
- 錆びたり割れたりといった損傷リスクがない
アスファルトシングルのデメリット
- 強風に弱くシートが破れる可能性がある
- 表面に吹き付けられた石粒が落ちてくる
アスファルトシングルは海外での施工率が高い屋根材であり、洋風の家によく合いまが、シンプルなので和モダンな家でも違和感はありません。
薄いシート状の屋根材であり軽量なため加工がしやすく、施工費が安く抑えやすいことが大きなメリットです。
シートという特性上雨漏りのリスクもが少ないとされますが、強風に弱いことはデメリットといえます。
そのため家のある場所や屋根の形によっては、アスファルトシングルが適さない可能性もあります。
強風にさらされやすい環境に建っている家や、風の影響を受けやすいとされる片流れ屋根の屋根材には、アスファルトシングル以外を選んだ方がよいでしょう。
耐用年数は約20年程度とされますが、約5年ごとに点検をするなど適切なメンテナンスをする必要があります。
ガルバリウム鋼板
ガルバリウム鋼板のメリット
- 耐用年数がスレートやアスファルトシングルより長い
- 軽く耐火性が高いため地震などの災害時に安全
- ひび割れのリスクがない
ガルバリウム鋼板のデメリット
- 施工費用がスレートやアスファルトシングルより高い(1平米あたり7,000円前後)
- 環境によっては短いサイクルでメンテナンスが必要
- 雨音などが室内に響きやすい
約10年ごとにメンテナンスが必要ですが、それが適切におこなわれた場合は40年程度の耐用年数が期待できます。
海が近いなど、ガルバリウム鋼板に負担がかかる環境に建つ家に施工する場合は、さらにこまめなメンテナンスが推奨されます。
最も安いランクの屋根材よりは施工費が高くなりますが、長期的にみるとコスパがよい屋根材であるといえるでしょう。
スタイリッシュな印象の屋根材なので、モダンなデザインの家にマッチします。
ジンカリウム鋼板
ジンカリウム鋼板のメリット
- 表面に石粒が吹き付けられているため品質が保たれやすい
- 耐用年数はガルバリウム鋼板よりさらに長い
- 軽く耐火性が高いため地震などの災害時に安全
- ひび割れのリスクがない
ジンカリウム鋼板のデメリット
- 施工費が高い(1平米あたり10,000円前後)
- 施工できる業者が限られる
素材はガルバリウム鋼板もジンカリウム鋼板も同じで、亜鉛やアルミ、シリコン合金のメッキ鋼板ですが、ジンカリウム鋼板はアスファルトシングルのように表面に細かな石粒が吹き付けられています。
そうすることで一般的なガルバリウム鋼板のデメリットとされる、防音性や断熱性の低さをカバーしています。
軽量で耐火性が高い点はそのままに、ガルバリウム鋼板の弱点をカバーしているジンカリウム鋼板ですが、価格が高いことはローコスト住宅にとって小さくないデメリットとなるでしょう。
瓦
瓦のメリット
- 塗装メンテナンス不要で耐用年数が長い
- 断熱性や防音性が高い
- 高級感がある
瓦のデメリット
- 施工費用が高い(1平米あたり10,000円前後)
- 重量があるため家への負担が大きく耐震性が高くない
瓦には和風タイプ、洋風タイプがあり、さらに粘土瓦やセメント瓦がありますが、粘土瓦は特に耐用年数が長いタイプの瓦です。
メンテナンスをしなくても、長ければ100年程度もつとされるほどです。
しかし重量があるうえ施工の手間がかかるため、費用が高くなるデメリットがあります。
瓦自体に重さがあるため家にかかる負担が大きく、地震などの災害に弱い点にも注意が必要な屋根材といえます。
ローコスト住宅の屋根材に瓦が選ばれるケースは、ほぼありません。
陶板
陶板のメリット
- 瓦より軽量
- 塗装メンテナンス不要で耐用年数が長い
- 耐用年数が非常に長い
陶板のデメリット
- 施工費用が瓦よりさらに高い(1平米あたり15,000円前後)
- スレートなどの軽量屋根材よりは重量がある
陶板は瓦より軽いため家への負担が小さく、災害時にも瓦より比較的安心できる屋根材です。
しかし施工費が高いとされる瓦よりさらに費用がかかるため、ローコスト住宅の屋根材として選択肢に挙がる可能性は低いと考えられます。
屋根材にガルバリウム鋼板を選んだ我が家の話
4年前に我が家は戸建てを新築しましたが、その際に選んだ屋根材はガルバリウム鋼板です。
ちなみに屋根の形はローコスト住宅の代表とされる、片流れ屋根です。
ガルバリウム鋼板を選んだ理由を正直に申し上げると、「バランスが良さそうでそんなに高くない、家に合っている」といった程度のことでした。
当時は普段の生活で見える機会が少ない屋根材などなんでもよいと思っていたため、すべての屋根材を調べて比較するという発想はありませんでした。
そのわりに大きな失敗にならなかったのは、提案してくれたハウスメーカーが良心的だったからといえます。
我が家がガルバリウム鋼板を屋根材に選んで感じた、良かった点と後悔した点をご紹介するので、屋根材選びの参考にしてくださいね。
ガルバリウム鋼板を選んで良かったと思うこと
ガルバリウム鋼板を選んで感じたメリット
- スタイリッシュな見た目
- 雨漏りなどの目立った問題はない
普段の生活ではほぼ見えることはありませんが、ガルバリウム鋼板の屋根がたまに視界に入るとスタイリッシュな印象を感じることができます。
ガルバリウム鋼板は好みが分かれる材質とされますが、外壁とは異なり屋根材に使用する場合はガルバリウム鋼板にマイナスな印象を持つ方は少ないのではないでしょうか。
ダークなカラーにするとスタイリッシュに見えると、個人的には感じています。
また雨漏りなどの大きな問題が4年間1度も発生していなことは大きなメリットといえます。
これはガルバリウム鋼板を選んだからというより、施工を依頼したハウスメーカーの職人の技術が高かったためでしょう。
屋根として雨漏りしないことは当たり前のことのようですが、ローコスト住宅やリーズナブルな分譲住宅ではよくあるトラブルといわれています。
なんとなくで選んだガルバリウム鋼板ではありますが、大枠では満足しています。
ガルバリウム鋼板を選んで感じた後悔
ガルバリウム鋼板を選んで感じたデメリット
- 雨音などが室内に響きやすい
これはガルバリウム鋼板のデメリットとして必ずといってよいほど挙がるものですが、我が家もこれを実感することになりました。
我が家の場合は屋根のすぐ下に寝室がくる間取りであることが問題の原因です。
大雨の際は寝室に大変よく雨音が響きます。
眠りが浅い方や繊細な方にとっては、死活問題ともなり得るでしょう。
我が家は片流れ屋根で屋根裏のある間取りですが、屋根裏をワンクッションとして挟んだ居住空間では雨音はまったく気になりません。
ガルバリウム鋼板を採用する場合、屋根のすぐ下に居住空間がくる間取りは避けるのがおすすめです。
また、ガルバリウム鋼板には断熱材が一体となったタイプもあり、それを選べば断熱性だけでなく防音性も上げられるようです。
費用アップは避けられませんが、間取りの都合上必要があれば検討するのもよいかもしれません。
まとめ
屋根の形はシンプルなものにすれば施工費用を抑えられますが、屋根材については「これを選べばローコスト」と簡単に答えがでません。
しかしローコスト住宅を予定している場合はスレート、アスファルトシングル、ガルバリウム鋼板あたりが選択肢になるケースが多いのが現実でしょう。
メンテナンスの頻度や初期費用のバランス、デザイン性などから好みの屋根材を決めることになります。
初期費用が安い屋根材は比較的短いサイクルでメンテナンスが必要になるため、それ以上に余分な修繕費用がかからないようにすることも大切です。
そのためにはメーカー選びを慎重にする必要があります。
- 技術の高い職人を雇っているメーカーを選び、初期の施工不良が原因のトラブルを回避する
- トラブルが起きても誠意あるアフターフォローをしてくれるメーカーを選ぶ
- トラブルが小さなうちに早めの対応をおこなってくれるメーカーを選ぶ
屋根材選びの際に適切な提案をしてくれたり、きちんとした施工を徹底していたりといった信頼度の高いメーカーを選ぶことで、余分な費用がかかることを回避できる可能性が高くなります。
メーカーからの適切なフォローによって、ローコスト住宅は実現できるといってもよいほどです。